金属ナノペーストのレーザーによる焼成
Laser sintering of metal nanopaste
研究者; 関西大学システム理工学部 電気電子情報工学科
超高周波工学研究室
佐伯 拓、飯田幸雄
担当学生
吉田真里奈、古賀雄貴、李ケンナン、野村卓弘、松田 隼
研究期間: 2011年〜現在
近年、プリンテッドエレクトロニクスという金属ナノ粒子を多く含有するインクもしくはペースト状の液体を基板に塗布し、炉で焼成することで容易に低コストな回路形成する技術が用いられている。ここでは、レーザー光を用いた焼成技術の開発を行っている。我々は、液相レーザーアブレーション法用いて酸化金属から還元された金属をナノペースト化し、レーザーで焼成することで各種の金属を得ている。
高繰返しパルスレーザーでの液相レーザーアブレーション法を用いると酸化金属粉から還元された金属ナノ粒子を大量かつ極めて低コストで調製可能となった。このため、作成される金属ナノペーストは、従来よりも低コストとなり、大量生産が可能となるはずである。
レーザー焼成装置
20W Continuous Wave Yb:ファイバレーザー (古河電工)
10W LD照射光源 SPOLD 波長917.6nm (浜松フォト二クス)
我々は、CW Ybファイバーレーザー 波長1064nm(古河電工) (太陽光励起レーザーと同じで置換可能)
や近赤外LD(浜松フォト二クス)を金属ナノペーストの焼成に用いている。
焼成に用いられるレーザーの種類
遠赤外線から紫外線領域まで
CO2レーザー、N2レーザー、BlueLD等、数WクラスのCWおよびパルスレーザー
利点
1)空間を選択的に焼成
2)高速で焼成
2000年初頭におけるAgペーストの焼成成功から始まり、確認しているかぎり日本国内の大学で3件、企業でAgペースト、Cuインクやペーストの焼成に関する研究が行われている。もちろん海外でもさかんに研究が進められている。ただし、Cuペーストの焼成にはAg、Auと異なり酸化しやすいという大きな問題がある。Fe、Al、Mg等についても同様に酸化に関する大きな問題があった。
我々の研究室で焼成を行った金属を以下に示す。(ただし、これらがすべてではない。)
他の金属でも可能であることをすでに確認済み。
酸化金属微粉末(平均粒径 数μm) 金属
Fe2O3 => Fe板
αAl2O3 => Al板
CuO => Cu板
MgO => Mg板
??? => ???
体積抵抗率: バルク金属の2.5倍から10倍
焼成例
サンプル1 焼成銅 Cu(淡赤色) サンプル2 焼成銅 Cu(通常の白銀色)
CuOから作成
結晶平均粒径 20nm以下
サンプル2の焼成銅は、ナノ組織金属板 (ナノ多結晶金属)であり、 通常の溶融炉でつくられた金属板と多くの性質が異なる。
Fe3O4 粉末を原料とする。 => レーザーでFe板を焼成
αAl2O3粉末を原料とする。 => Al板
MgO粉末を原料とする。 => Mg板
CuO粉末を原料とする。 => Cu板
上記のレーザーによる金属ペーストの焼成は、すべて空気中で行われる。
以下焼成金属のサンプルを示す。
上から 焼成Fe金属板
焼成Cu-Fe金属板 合金
焼成Cu-Al金属板 合金 (ジュラルミン)
焼成Cu-Zn金属板 合金 (真鍮、黄銅)
LiO粉末を原料とする。 => 焼成Li板
上記金属板をバーナーで1000度以上に加熱した後
通常、Li金属は空気中に放置すると窒化物を生成し、表面が腐食してゆく。
また、水と激しく反応し水素を生成するため、アルコール中に保存する必要がある。
一方、焼成Li板は、空気中で非常に安定で、水蒸気や窒素と反応しない。
参考文献
学会発表
1. T. Saiki, M. Yoshida, Y. Koga, K. Li, Y. Iida,
"Laser sintering of nanopastes with reduced metal nanoparticles prepared by laser ablation in liquids",
Proceeding of The 3rd Advanced Lasers and Photon Sources (ALPS’14), (2014)
163.
2. 佐伯拓 、吉田真里奈、古賀雄貴、李ケンナン、飯田 幸雄
"液相レーザー還元金属ナノ粒子ペーストのCWレーザー焼成"、
第61回応用物理学会春期学術講演会、神奈川 相模原、青山学院大学、2014年 3月18日 18p-PA5-2.
発表論文
1. T. Saiki, Y. Iida, K. Ri, M. Yoshida, Y. Koga,
"Electrical propety of laser-sintered nanopastes with reduced metal
nanoparticles prepared by laser ablation in liquids",
Advances in Materials, Vol. 3 No. 6 Dec. (2014) pp.75-88.
2. 佐伯 拓、中村啓人、徳本樹一、中村和広、植松 徹、
“還元シリコンナノ粒子を原料とする焼成シリコンナノペーストを用いた金属空気電池の試作“、レーザー研究、
(2017), Vol. 45 No.6.
T. Saiki, K. Nakamura, J. Tokumoto, K. Nakamura, T. Uematsu, “Fabrication
of metal air cells using sintered Si nanopaste with reduced Si nanoparticles”,The
Review of Laser Engineering, (2017), Vol. 45 No.6.